独立行政法人
家畜改良センター

家畜改良の推進、優良な種畜や飼料作物種苗の生産・供給等を通じて、
我が国の畜産の発展と国民の豊かな食生活に貢献することを使命としています

家畜改良センターについて

理事長からのメッセージ

1.モノ造り(ハード事業)について

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家畜改良センターは、文字通り、家畜(家禽と飼料作物を含む)の改良の仕事、つまり種畜の改良と供給など、いわゆるモノを造るハード事業を行っています。一方、生産された家畜などは民間事業体や都道府県等に供給されるため、一般的にはあまり知られていませんが、専門家からは高い評価を得ている機関です。
具体的には、全国トップクラスの乳用や肉用の種牛、遺伝的多様性を確保する上で貴重となる系統や品種の肉用牛、食味にすぐれた種豚、地鶏や特産物の存在に欠かせない国産種鶏(肉用、卵用、兼用)や、新品種などの種苗を増殖し、馬、山羊、羊などの種を保存し、供給しています。
昨年のセンター10大ニュースでも採りあげましたが、乳用牛や肉用牛の全国的活躍はもちろん、当所の種豚や種鶏も農家で利用され、生産された高品質で食味の良い豚肉や鶏肉が全国的な賞を受けています。これらのことは当所のハード事業の社会的成果の一面を示すもので、これら種牛、種豚、種鶏、種苗等の供給は、国際的な競争を意識した国産畜産物の品質向上に役立つものと確信しています。

2.技術・情報などの提供(ソフト事業)について

ハード事業に加えて、当所において重要性を増しているのが畜産に関する様々な技術・評価・情報などを提供するソフト事業で、これも社会に役立つ数々の貢献をしています。これらソフト事業においても多くの家畜・家禽を飼育している当所ならではの特徴を活かした成果をあげています。というのも家畜や家禽、種苗の色々な能力に関する様々な角度からの評価は全国的レベル(乳用牛や種苗などは国際的レベル)で、かつ公正、精密であることが要求され、それらデータを出すことは公的機関の役割として重要で、当所が担うべきものです。
その中で最新の注目すべき当所の開発技術としては、大規模データを用いコンピュータを駆使した統計遺伝学的評価に加え、先端のゲノム情報も含めた遺伝的評価(ゲノミック評価)があり、既に乳用牛、肉用牛で実用化段階に入り、豚での応用も検討しています。また私自身が中心となって研究を進めている肉質の客観的評価データ(近赤外光ファイバ法による脂肪質と脂肪含量評価値)も和牛肉生産に大きな影響を与え始めており、豚における応用技術も当所で磨いています。さらに当所が管理する個体識別情報は畜産クラスターにつながっており、将来、ビッグデータとなって様々な有益な情報を与えるようになるものと期待されています。

3.家畜飼育の重要性について

聞くところによると、都道府県や大学、国の研究機関では予算の厳しさから職員や家畜の飼育頭数を大幅に減らしつつあります。多頭数の飼育は数の多さを必要とする育種改良のために必要であるだけでなく、農家段階につながる実践的研究データを採る際にも大切です。民間では飼育頭数は多いものの、精密な試験データをとれるだけの施設や人的余裕はなかなかなく、せっかく生み出された技術も自身のもののみとしてしまいがちです。大学では畜産学離れが進みつつあり、論文発表を重視するため、家畜の肥育など時間と経費がかかる研究よりも、どうしても室内でデータを出しやすい細胞などの基礎研究に力を入れがちです。また多くの都道府県は後に示すように家畜や技術を持つ人員確保に苦慮しています。
そういった意味で家畜改良センターは、家畜を用いた実用化研究・実証研究のためのわが国最後の砦であるともいえます。現場で多くの家畜を用いてこそ得られた技術例として、最近、当所で考案された牛における代謝プロファイル法があります。この方法によって栄養管理でここまで繁殖成績を改善できるものなのかと、産官学から注目を浴びています。現在、改訂中の「肉用牛の飼養標準」における和牛の発育曲線などにおいても当所の成果は大切です。また育種の分野では国内外の学会で注目される統計遺伝学的手法の実践的成果も次々に出しており、それらは多くの家畜とそのデータを扱える当所の強みが基本となっています。

4.技術継承の重要性

研究成果だけでなく、技術継承という意味でも当所は様々な研修を通じて貢献しています。ただ、所内でさえしっかり技術伝承しているとは必ずしもいえない部分もあり、今後はそれをもっと確実にし、さらに拡大させたいと思っています。家畜飼育の世界では、経験がないと、知識だけでは実際の現場にはうまく適用できません。わかりやすい例では、家畜等の重大な伝染病が発生し、迅速に処分しないといけない時にも、当所の重機を扱う技術や動物を扱う技術が大いに役立っています。新規就農者も栽培などのように簡単に経験するというわけにはいかないのが畜産です。
困ったことに、産官学の諸機関で現場に詳しい畜産技術者が確実に減りつつあります。実際、人員削減の厳しい都道府県ではその分野の担当研究者が一人しかいないという所も多く、異動の際、技術も含めた充分な引き継ぎが行われず、長期的な研究や農家への技術指導ができない状況が起きています。このような場合には当所の技術研修がお役に立っています。
また、指導する人が減り、教えられる側の世代も意識が変化しており、昔の見て覚えよ的な教育方法ではうまくいきません。今後、当所ではマニュアルなどを再整備し、画像や映像情報なども活用して畜産技術情報を残していき、内部の技術伝達だけでなく、すぐれたものは外部にも発信していきたいと考えています。実際、今まで技術開発にも貢献し技術の蓄積がある超音波採卵-体外受精技術や超音波肉量評価技術や肉質評価技術、種苗評価技術を初めとして、当所の様々な技術研修やマニュアルは実践で役立っています。さらに、今後の体系立てたマニュアルや映像による技術情報を作っていけば研修を受けられない多くの方々にも役立つようになるでしょう。

5.連携の重要性とスマート農業

当所では上記に示したように家畜飼育、飼養管理技術や実践技術においてすぐれた点はありますが、まだまだ不足している点も多々あり、今後も世界も含めた他機関の優れた技術を導入していきたいと考えています。また当所の他の長所として行政との連携があり、目的意識のはっきりした優秀な人材が揃い、また速やかに行政からの技術課題に応えられ、施策にも反映されるという点があります。さらに、他研究機関と比べ、明確かつ実践的な目標に向かって個人よりグループの組織活動として技術開発するという特徴があります。
一方で技術開発力を担う個々の独創性のある人材には不足があり、国立研究機関とはすでに連携しているものの、多くの独創的かつ興味深い研究をしている大学などとはまだまだ連携不足です。昨年、近畿大学との連携協定をおこなったのもその方策の一つでもありますし、今後も大学や民間との連携を異分野も含めて活発に行いたいと考えています。大学との連携は実践現場での教育を通じて興味を持たせ、畜産人材の確保にもつながるものと期待しています。
異分野、特に先端工業分野の導入では、当所でも搾乳ロボット、哺乳ロボットなどの実証研究を行っています。今後も、世界中から工業技術も含めた優れた技術やアイデアを当所内の実践の現場へと導入し、長所短所を明らかにしてわが国で使えるようアレンジし、その情報を農家段階に伝えるようにしたいと思います。これには、わが国初期の自動車産業や機械産業界において欧米から優れた基礎技術や基盤技術を導入し、特に品質を重視して応用技術を発展させ成功を収めた例を見習いたいと思います。品質重視はわが国の強みであり、当所の肉質評価技術も他機関と比較しても強みが発揮できるほどのものを持っていますし、他にも優れた育種技術や繁殖技術なども評価と選抜を通じて、国際競争力のある畜産物生産に役立っています。また、畜舎や機器類などの施設・設備についてはIT化や伝染病の侵入防止、動物福祉を予算に応じて計らねばなりませんが、飼養管理に携わる技術専門職員の技術にも特筆すべきものがいくつもあります。そのような有益な実践技術情報を当所内だけでなく外にも伝えたいと思っています。
工業界の先端技術の導入は将来の発展が期待されるスマート農業に貢献します。幸い、私自身、今まで異分野を含む数多くの企業とも積極的に連携して数多くの研究を行い、実践に成功してきました。有名なところでは超音波断層法(妊娠診断、肉量評価)の畜産分野への導入、工業界や食品産業などとのエコフィード技術(油温脱水乾燥法や焼酎会社の焼酎粕、コンビニ業界の総菜、パン業界の廃棄パン類等々の飼料化)の連携、製薬メーカーとの豚の免疫学的去勢法、最近では近赤外光ファイバ法の開発と肉質評価分野への導入などで社会実装してきました。今後も産官学や異分野との連携も積極的に進めたいと思っています。将来における家畜飼養へのAI技術の応用も当所の多くの家畜と飼養技術の経験とそのデータが役立つでしょう。
私自身、都道府県や生産団体、学会から依頼された数多くの講演とそれに伴う技術の普及を通じて、産業や人に役立つことによる仕事の喜びを充分に知っています。こういった喜びを多くの職員に感じていただけるようになることが当所を活性化し、わが国の畜産にも貢献できることになると考えます。生産者の皆さんには、今後も、当所が発信する技術や種畜・種苗等の情報に注目していただきたいと思います。
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