鶏の防疫

野鳥飛来状況モニタリング

最終更新日 2023/01/19
野鳥飛来状況のモニタリングについて
近年,高病原性鳥インフルエンザは世界各地で発生が続いています.鳥が感染するインフルエンザウイルスはA型ウイルスで,抗原型によってさらに(H1〜H16)×(N1〜N9)の組み合わせで分類されています(亜型と呼ばれて,たとえばH5N1と記述されます).これらの亜型は地域と発生年とで移り変わり,ひとつのエリアに注目すると,同じ型のウイルスの拡散していくようすがわかります.図の緑色のゾーンである東アジアはその一つで,周辺各国での発生状況は日本国内のウイルスの存在を考えるのに役に立ちます.
 
これらのウイルスは主に水鳥によって運ばれていると考えられています.環境省は,日本に渡ってくるガンカモ類の飛来状況を調べており,各月の旬ごとに観察された水鳥の種類と羽数とを公表しています
兵庫牧場では,このデータを利用して周辺のカモ類の多さを推測し,インフルエンザ対策の参考にしています.すなわち,渡り初めから北帰行までの間,カモ類の飛来状況を日本地図に書き込むことによって,日本に到着し,周辺の県へと分散していく様子がうかがえるのです.下図は,飛来羽数の多さを色で示しています.増えるにつれて青から赤に変わっていきます.
左図:2019年9月初旬.ガンカモ類が日本に渡り始めた時期です.
右図:2020年1月中旬.色がついていないのは,調査地点のない都府県,振興局です.
 
必ずしも正確ではありませんが,あくまでも防疫の気持ちを引き締めるために,飛来数が多いとそのエリアのウイルス量も多いだろうと仮定しています.というのも,牧場のある兵庫県南西部にわたってくるカモ類について,
  • カモ類の群れのサイズと飛来状況の詳細は把握できていません
  • 各群がどの程度ウイルスを保有しているのかも確かめられていません
  • そのシーズンにカモ類が保有しているウイルスの病原性の詳細はわかりません
現状では,いずれの種類の鳥も同程度にウイルスを保有していると見なして対策することになります.したがって,飛来数が多くなるといつもより一層,消毒など対策に気を付けるようにしています.
 鳥インフルエンザ発生状況とウイルス遺伝子型
上左図は,2020年秋~2021年に養鶏場で発生した高病原性鳥インフルエンザで検出されたウイルスの系統を示しています(農研機構動物衛生部門,(研究成果) 「今季国内の高病原性鳥インフルエンザウイルスの遺伝的多様性」.2021年3月10日付から作図.https://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/press/laboratory/niah/138720.html).
上右図は,発生および関連農場のあった府県と,野鳥のへい死が報告されている道県とを示しています.
 ガンカモ類総飛来数
2020年11月から12月にかけて、飛来数の多いことが分かります.
環境省渡り鳥の飛来状況から作図(http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/bird_flu/migratory/ap_wr_transit/index.html)
兵庫牧場近隣府県では,ガンカモ類は2月に渡り始めて4月には相当減ることが分かります.また,滋賀県(琵琶湖)のグラフは2峰性で渡りの経由地であることを示しています.
2020秋~2021
2021秋~2022
ガン・カモ類の飛来について
ウイルス型と渡り鳥の飛行ルート
解説資料

なお,掲載にあたり一部の写真・図等を削除しています.

場内への野生動物の侵入については,「それ、なんや? no.43 ミッシングリンク」で検討しています.昨年度,牧場外周を金網フェンスで囲んであるにもかかわらず,中型哺乳類が監視カメラに写っていました.場外へ出ていく雨水溝から入ってくるものと考えられ,補修しました.鳥ばかりに気を取られていると足元をすくわれる,と思いました.