一定規模の鶏集団について、雛から親鶏まで飼育するライフサイクルの中で、産肉性、産卵性等に関する能力検定、統計遺伝学に基づく精度の高い遺伝的能力評価、最新の遺伝子解析技術を活用した不良形質の排除等を行い、優秀な鶏個体を選抜し、次世代の雛を生産します。
こうしたプロセスを何世代にも渡って繰り返し、最終的にコマーシャル鶏作出のもととなる能力的に特徴をもった系統(原々種鶏)を造成します。
(兵庫牧場では白色コーニッシュ、白色プリマスロックの肉専用種からシャモ等の在来種も含め8品種14系統を造成し保有しています。)
兵庫牧場が保有する品種には、劣性白色プリマスロック(小雪)や赤色コーニッシュ(紅桜)という今では世界的にも貴重になった鶏も含まれています。これらは、特に産肉性を追求する育種改良の世界的なトレンドの中で淘汰されてきた鶏ですが、兵庫牧場ではおいしい鶏肉づくりの素材という観点から、あえて育種改良に取り組んでいるものです。
小雪については、劣性白色(注)という特徴から、全国の銘柄鶏・地鶏生産(注)においても、在来種等の交配相手として幅広く利用されています。
また、昔から味には定評があるものの肉用鶏として幅広く利用するには体が小さいという課題があった卵肉兼用種の横斑プリマスロックやロードアイランドレッド、更にはシャモ等の在来種についても、兵庫牧場での長年の育種改良の結果、かなり大型のものに改良されており、これらも、地域の銘柄鶏・地鶏(注)の生産に大いに利用されています。
(注)劣性白色:有色の鶏と交配すると子供も有色のものが生まれる、ただし現在、黒色の因子を保有しているものもあるため、交配の結果、赤褐色の他に黒色が発現することもある。
(注)銘柄鶏・地鶏:「銘柄鶏」とは鶏種、飼料、飼育方法、出荷日齢等について普通のブロイラーと異なる方法で差別化を図っているものの総称で、「地鶏」とは、特に鶏種について在来種の純系によるもの、又は在来種の素びなの生産の両親か片親に使ったもので、在来種由来の血液が50%以上のもので一定の飼育条件をクリアーしたものを言います。
系統造成の次のステップとして、造成された系統をどのように組み合わせれば前述の雑種強勢効果をうまく引き出し、生産者や消費者が求める能力の高い特徴のあるコマーシャル鶏を作出できるのか(相性の良さ)を調べる必要があります。兵庫牧場では、県の畜産試験場や民間の生産者の方と連携・協力し、牧場の保有する系統同士の相性、あるいは地域の在来鶏との相性を調査しています。こうした組み合わせ試験の成績を基に実用的に利用できる国産鶏種作出のための系統の組合せを公表しています。