山羊は、乳利用を目的として、主に本州で日本ザーネン種を中心に飼養されているほか、沖縄等では、肉用として在来種や日本ザーネン種、ボア種等との交雑利用が行われているなど、各地の特性や需要に応じた生産がされている。
また、畜産物利用だけではなく、高い放牧適性を生かした耕作放棄地の有効活用や景観保全への活用、小型で扱いやすい特性を生かした、ふれあいによる癒やし効果の発揮や教育への活用など、多様な利活用が行われている。
このような中、最近は、山羊乳を利用したチーズ等の乳製品加工・販売の取組が見られており、乳成分に関する能力や泌乳能力の向上が求められているほか、食肉需要の高まりを受け、山羊肉に対する需要についても高まりが見られているが、国内の限られた生産基盤では、種畜を確保しながら飼養頭数の増加につなげることが困難であり、かつ、と畜先も限られる状況にある。
さらに、山羊の多様な利活用が図られる中、技術者・指導者等の不足や飼養管理・衛生管理技術の向上を図るための情報提供等も課題となっている。
(1)能力に関する改良目標
生産物の需要拡大に応えるため、斉一化に重点を置き、安定した生産体制づくりに努めるものとする。また、生産コストの低減を図るため、繁殖能力の向上に努めるとともに、乳用にあっては、山羊乳・乳製品の需要に対応するため、泌乳能力や乳成分に関する能力の向上、肉用にあっては、産肉能力の向上に努めるものとする。
① 繁殖能力
受胎率の向上に努めるとともに、肉用にあっては、更にほ育能力等の向上に努めるものとする。
② 乳成分及び乳量
乳用にあっては、乳量の向上に努めるとともに、乳脂肪分や無脂乳固形分等の乳成分の維持・向上に努めるものとする。特に乳成分に あっては、データの収集体制の構築に向けた検討を行う。
総乳量(250日換算) | |
現在 | 422kg |
目標 (令和12年度) |
600kg |
飼養頭数については、乳用、肉用それぞれ需要動向に応じた頭数となるよう努めるものとする。
(参考)山羊をめぐる情勢
① 山羊をめぐる情勢
我が国の山羊飼養は、自家消費の乳用として1、2頭飼いが主流であったものが、近年は山羊乳・乳製品販売のために多頭飼いを行い商業的に取り組む農家も出てきている。山羊乳については、その機能性(低アレルギー、高タウリン等)、山羊肉については、沖縄県を中心に近年の食肉需要の高まりの中、低脂質・高たんぱくであること等から注目されている。
飼養頭数は、約2.6 万頭(平成29 年)であり、最近少しずつ増加傾向にあるが、山羊肉については、年間約500 トン程度の需要がある中、国産の山羊肉の生産量は、約60 トンで総需要量の約11%となっている。
② これまでの改良の取組
山羊の改良は、昭和10 年代から30 年代までに乳用の利用を目的としてザーネン種の種畜導入が図られ、国及び都道府県において行われた研究、系統造成、種畜の民間への配布により、泌乳能力等の改良及び繁殖技術の開発が図られ、日本ザーネン種が作出された。昭和40 年代後半以降は、国を中心に種畜の配布が継続的に行われ、昭和59 年からは、凍結精液の作成・配布も行われている。
近年、沖縄県では肉用種としてボア種、ザーネン種及びヌビアン種、独立行政法人家畜改良センターでは乳用種であるザーネン種をニュージーランドから導入し、これらを基にした種畜生産が進められている。
※家畜改良増殖目標を詳しくご覧になりたい方は、農林水産省のHPをご覧ください。