家畜改良増殖目標
最終更新日 2021/04/14
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第11回家畜改良増殖目標
. 山羊
  1.改良・増殖をめぐる現状と課題

山羊は、乳利用を目的として、主に本州で日本ザーネン種を中心に飼養されているほか、沖縄等では、肉用として在来種や日本ザーネン種、ボア種等との交雑利用が行われているなど、各地の特性や需要に応じた生産がされている。
また、畜産物利用だけではなく、高い放牧適性を生かした耕作放棄地の有効活用や景観保全への活用、小型で扱いやすい特性を生かした、ふれあいによる癒やし効果の発揮や教育への活用など、多様な利活用が行われている。
このような中、最近は、山羊乳を利用したチーズ等の乳製品加工・販売の取組が見られており、乳成分に関する能力や泌乳能力の向上が求められているほか、食肉需要の高まりを受け、山羊肉に対する需要についても高まりが見られているが、国内の限られた生産基盤では、種畜を確保しながら飼養頭数の増加につなげることが困難であり、かつ、と畜先も限られる状況にある。
さらに、山羊の多様な利活用が図られる中、技術者・指導者等の不足や飼養管理・衛生管理技術の向上を図るための情報提供等も課題となっている。

  2.改良目標

(1)能力に関する改良目標

生産物の需要拡大に応えるため、斉一化に重点を置き、安定した生産体制づくりに努めるものとする。また、生産コストの低減を図るため、繁殖能力の向上に努めるとともに、乳用にあっては、山羊乳・乳製品の需要に対応するため、泌乳能力や乳成分に関する能力の向上、肉用にあっては、産肉能力の向上に努めるものとする。

① 繁殖能力
受胎率の向上に努めるとともに、肉用にあっては、更にほ育能力等の向上に努めるものとする。

② 乳成分及び乳量
乳用にあっては、乳量の向上に努めるとともに、乳脂肪分や無脂乳固形分等の乳成分の維持・向上に努めるものとする。特に乳成分に  あっては、データの収集体制の構築に向けた検討を行う。

 表:能力に関する目標数値
  総乳量(250日換算)
現在 422kg
目標
(令和12年度)
600kg
注1:ザーネン種のものである。
注2:総乳量は、産次、分娩後日数、1日当たり乳量を基に、泌乳期間を250 日換算して算出したもの。
 
③ 産肉能力
肉用にあっては、発育性、増体性及び枝肉歩留まりの向上に努めるものとする。

(2)体型に関する改良目標

① 強健で肢蹄が強く、体各部の均称のとれた飼養管理が容易な大きさのものとする。

② 乳用にあっては、乳器に優れ、搾乳が容易な体型のものとする。肉用にあっては、体積に富み後躯が充実したものとする。

(3)能力向上に資する取組

① 改良手法
ア 血統登録情報を活用した近親交配の回避と間性(注)等の不良形質の排除に配慮した交配に努めるものとする。
イ 客観的な能力評価手法を活用し、優良な種畜を選抜・育成するため、関係者の連携の下、関連するデータの収集、分析体制の構築等に努めるものとする。
ウ 改良素材として純粋種の適正な利用に努め、能力の向上を図るものとする。

(注):間性
雌雄の特性を併せ持ち、繁殖能力のないものをいう。山羊の場合は、角の有無の遺伝と密接に関係しており、無角の個体同士の交配で無角の遺伝子がホモとなる個体が生まれた場合、間性となることが分かっている。

② 優良な種畜の確保
優良な種畜の不足が懸念されることから、関係機関や飼養農家の協力の下、優良な種畜の供給体制づくりを推進するものとする。
また、そのためにも、血統登録頭数の確保に努めるものとする。

③ 家畜人工授精技術の活用
効率的な改良増殖を推進するため、獣医師等の技術者の育成等を通じた人工授精技術の向上を図るとともに、国内外の優良な種畜の精液の活用も含め、人工授精技術による優良種畜の広域的な利用に努めるものとする。

④ 飼養・衛生管理
ア 飼養及び衛生管理技術の向上を図り、人工ほ乳技術を活用した子山羊の損耗防止や分娩前後の母山羊の適正な栄養管理等により生産性の向上に努めるとともに、寄生虫への抵抗性についての現状把握に努めるものとする。
イ 山羊乳・乳製品又は食肉等の利用目的に応じた適切な品種の選定や、その能力を発揮させるための飼養管理の改善に努めるものとする。
ウ 暑熱対策等の実施のほか、家畜疾病の発生予防及びまん延防止のため、生産者における飼養衛生管理基準の遵守の徹底について指導するものとする。

⑤ 多様な利活用に関する情報共有
山羊の多様な利活用に関する情報の収集・共有を図るとともに、利用目的に応じた優良な山羊の供給体制づくりを推進するものとする。

  3.増殖目標

飼養頭数については、乳用、肉用それぞれ需要動向に応じた頭数となるよう努めるものとする。

(参考)山羊をめぐる情勢

① 山羊をめぐる情勢
我が国の山羊飼養は、自家消費の乳用として1、2頭飼いが主流であったものが、近年は山羊乳・乳製品販売のために多頭飼いを行い商業的に取り組む農家も出てきている。山羊乳については、その機能性(低アレルギー、高タウリン等)、山羊肉については、沖縄県を中心に近年の食肉需要の高まりの中、低脂質・高たんぱくであること等から注目されている。
飼養頭数は、約2.6 万頭(平成29 年)であり、最近少しずつ増加傾向にあるが、山羊肉については、年間約500 トン程度の需要がある中、国産の山羊肉の生産量は、約60 トンで総需要量の約11%となっている。

② これまでの改良の取組
山羊の改良は、昭和10 年代から30 年代までに乳用の利用を目的としてザーネン種の種畜導入が図られ、国及び都道府県において行われた研究、系統造成、種畜の民間への配布により、泌乳能力等の改良及び繁殖技術の開発が図られ、日本ザーネン種が作出された。昭和40 年代後半以降は、国を中心に種畜の配布が継続的に行われ、昭和59 年からは、凍結精液の作成・配布も行われている。
近年、沖縄県では肉用種としてボア種、ザーネン種及びヌビアン種、独立行政法人家畜改良センターでは乳用種であるザーネン種をニュージーランドから導入し、これらを基にした種畜生産が進められている。


※家畜改良増殖目標を詳しくご覧になりたい方は、農林水産省のHPをご覧ください。

家畜改良増殖目標(令和2年3月)