ゲノム分析を用いた画期的新母材育成システムの構築
最終更新日 2017/01/27

・目的と背景
ライグラス類における冠さび病は、飼料作物栽培上被害の大きな病気の一つです。そこで、長野支場ではペレニアルライグラスが持つ冠さび病抵抗性遺伝子を見つけ、その遺伝子を利用することで冠さび病に強いライグラスを作出する画期的な新母材育成システムを構築することを目指しています。
この研究は(独)農業・食品産業技術総合研究機構畜産草地研究所との共同研究です。

黄色部分が冠さび菌胞子

・方法
冠さび病抵抗性遺伝子を持つペレニアルライグラスにイタリアンライグラスワセアオバを交配した雑種F1に、さらにワセアオバを4~5世代戻し交配し、最終的にその遺伝子を持つワセアオバを作出します。一般にイタリアンライグラスは1世代/1年のペースで世代が進みますが、時間短縮のため、長野支場では冬に温室を使い、2世代/1年のペースで世代を進めています。
 
冠さび病抵抗性遺伝子を持つ株を選ぶ方法には以下の2つを用いています。
1.実際に冠さび菌を接種し、病徴を観察する。
2.各株についてDNAマーカーを用いて抵抗性遺伝子近くの遺伝子配列を持っているかを調べる。
ここで用いているDNAマーカーはAFLPマーカーとSSRマーカーです。

※用語解説
・AFLP(Amplified Fragment Length Polymorphism)
制限酵素を用いてDNAを切断し、その切断した部分をPCR増幅させ、その増幅断片サイズの違いを電気泳動で多型として検出する方法。

・SSR(Simple Sequence Repeats)
2~6塩基の遺伝子の反復配列をPCR増幅させ、その増幅断片サイズの違いを電気泳動で多型として検出する方法。

DNAマーカーと遺伝子群との位置関係を示した図

【成果】
これまでにペレニアルライグラスで見つかった抵抗性遺伝子(畜産草地研究所共同)
・マンハッタンⅢ(ManhattanⅢ) 1遺伝子
・ウィザード(Wizzard) 1遺伝子
・サムソン(Samson) 1遺伝子
・マトリックス(Matrix) 1遺伝子
・アドミット(Admit) 1遺伝子
長野支場では、ペレニアルライグラス、マンハッタンⅢ、ウィザードおよびシャーウッド(Sherwood)から見つかった抵抗性遺伝子を持つ株(F1)にイタリアンライグラスワセアオバを3回戻し交配しBC3F1を作出しました。今後は、BC4F1あるいはBC5F1まで作出する計画です。