独立行政法人
家畜改良センター

家畜改良の推進、優良な種畜や飼料作物種苗の生産・供給等を通じて、
我が国の畜産の発展と国民の豊かな食生活に貢献することを使命としています

調査研究

遺伝子育種<用語説明>

最終更新日 2017/05/25

<用語説明>

育種について

家畜の能力は、エサや水などの栄養状態、気温や畜舎など環境要因によるものと、両親から受け継いだ遺伝的な要因によって決定します。家畜改良センターでは、遺伝的要因に着目して、遺伝子情報による優良な家畜の作出、改良に活用するための研究に取り組んでいます。

泌乳量や成長能力などに関与する遺伝子を特定するには多くの時間と労力が必要となりますが、関与する遺伝子そのものが不明であっても、特定の遺伝子座のDNA配列の違いと生産性との間に有意な関係があれば、この情報を育種に利用することができます。

例えば、生産能力を支配している遺伝子座において、DNA配列の違いが特定できれば、この情報を用い、受精卵の段階で、しかも多数の受精卵について短時間で能力を判定することが可能となり、従来の後代検定のための施設規模、飼養頭数、時間が大幅に効率化されることが予想され(肉用牛では5年→2年半)、経済的効果も大きいと考えられます。また、能力の評価ができない幼若齢期での評価や性に偏った形質(繁殖性や産卵性など)の評価に、遺伝子情報はより効率的に利用できます。

量的形質

食肉の軟らかさ、牛乳中の脂肪量あるいは家畜の成長速度などは、個体毎に異なりますが、その違いが連続的であり、数値として把握できます。このように数値として把握できる能力(形質)を「量的形質」といいます。

量的形質には、多数の遺伝子が関与し、それぞれの遺伝子のわずかな違いが合わさることによって、大きな違いを生じていると考えられています。

遺伝子座

遺伝子の染色体上の位置を表す地図のことを染色体地図といいますが、地図上における遺伝子の位置のことを「遺伝子座」といいます。

DNAマーカー

同一生物種の間でDNA配列を比較したとき、ほとんどの部分では同じですが、個体間で違いのある部分が複数、散在します。こうした違いのある部分(多型)を目印にすることを「DNAマーカー」といいます。

多型には、いくつかの種類があり、ごく短い反復する配列の回数の違い(マイクロサテライト)や部分的な配列上の1カ所の違い(一塩基多型:SNP)をDNAマーカーとして使っています。

DNAマーカーは、個人を同定するための指標にもなることから、親子判定にも利用されています。

マーカーアシスト選抜

経済的に重要な形質を支配している遺伝子座において、DNA配列の違いを目印として選抜することを「マーカーアシスト選抜」といいます。

多型

DNA配列上に個体間で違いのある部分を「多型」といいます。家畜の能力に関与する多型がいくつか特定されています。


ゲノム

生命を維持できる最小限の染色体群を「ゲノム」といいます。例えば、ヒトの体細胞(染色体46本)は2倍体であるのでゲノムは2組、1ゲノムの染色体数は23本となります。つまり、生殖細胞は1組、体細胞には2組のゲノムを持っていることになります。なお、ウシの1ゲノムの染色体数は30本、ブタは19本、鶏は39本です。

黒毛和種

我が国の在来牛をもとに改良された和牛(黒毛和種、褐毛和種、日本短角種及び無角和種の4品種)の中でも圧倒的に多く飼養されている品種であり、その優れた肉質(特に脂肪交雑:さし:霜降肉)を生み出す能力は、どの品種よりも明確に優れています。

脂肪酸組成

脂肪酸は、食品中に含まれる脂質(脂肪・油)の構成要素です。脂肪酸には、リノール酸をはじめ、オレイン酸、リノレン酸など十数種類あります。これらの含有量(比率)を脂肪酸組成といいます。

理化学分析項目

肉質などを客観的に評価するため、分析機器を使って測定されるもので、食味に関与する主な項目は、以下のとおりです。
  • 一般組成(=水分、粗脂肪、粗蛋白質含量)
  • 保水力(加圧法、遠心法)
  • ドリップロス、加熱損失
  • 剪断力価、破断応力
  • 筋線維の種類、太さ、コラーゲン量
  • 脂肪酸組成、脂肪融点、TBARS
  • 遊離アミノ酸量、イノシン酸量
  • 香気成分

肉斑

鶏卵中に時折見られる肉片のような塊を「肉斑」といいます。一般に、白色卵と比較し褐色卵で出現頻度が高いことが知られています。肉斑自体を食べても問題ありませんが、生食文化のある日本の消費者からは敬遠される傾向にあります。このため、肉斑の出現頻度を低下させるため、遺伝子情報による選抜の実用化に向け取り組んでいます。


羽色

鶏の羽色に関連する遺伝子は、次の3つがあります。

pmel17(プレメラノソームタンパク):白色を発現
TYR(チロシナーゼ):白色を発現
MC1R(メラノコルチン1受容体):黒色を発現
事例1:白色羽装と遺伝子
現在、地鶏などの交配相手として、白色プリマスロック種が広く用いられています。一方、白色プリマスロック種と地鶏の交配により生産される交雑鶏では、有色であることが望まれています。

しかしながら、白色プリマスロック種では、実際の羽の色(羽装)だけでは、遺伝的に優性であるか劣性であるか区別ができないため、遺伝子を分析する必要があります。母親となる白色プリマスロック種では、PMEL17遺伝子が劣性(i / i )型、さらにTYR遺伝子が劣性(c / c )型に固定されるように選抜しています。
劣性白色系統(遺伝子型:i /i, c / c)の画像
劣性白色系統(遺伝子型:i /i, c / c)
事例2:黒色羽装と遺伝子
また、有色であっても、地鶏の羽色として褐色羽装が好まれるため、黒色羽装を発現させるMC1R遺伝子についても劣性(e / e )型に固定されるように選抜しています。
遺伝子型:E/ eの画像
遺伝子型:E/ e
遺伝子型:e / eの画像
遺伝子型:e / e
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