独立行政法人
家畜改良センター

家畜改良の推進、優良な種畜や飼料作物種苗の生産・供給等を通じて、
我が国の畜産の発展と国民の豊かな食生活に貢献することを使命としています

飼料作物

家畜改良センターでのもと種子の増殖

最終更新日 2017/05/25

家畜改良センター(国内)でのもと種子の増殖

育種機関による新品種の種子1kgを原原種子、原種子、保証種子250,000kgに増殖の画像

イタリアンライグラスの例の画像

優良な特性を持つ新しい品種の種子(育種家種子)はわずかな量であり、農家段階で広く利用されるための種子の量を確保するには、これを何倍にも増殖する必要がありますが、一回の増殖で得られる種子の量は限られているため、数回(数世代)にわたって増殖することとなります。
日本では、飼料作物の多くが開花・結実期である5~7月に梅雨と重なること、種子生産に必要な広大な用地の国内での確保が困難であることなどから、最終世代(保証種子)は海外において生産しています。
ただし、この種子増殖の過程においては、他品種との受粉や気候条件等の影響により、その品種が持つ優良な特性に変化を生じなさせない事が重要となります。このため、最終世代である保証種子を生産するためのもと種子(原種子)までを国内で増殖し、海外にて何世代もの増殖を繰り返すことによる特性の変化を防いでいます。

家畜改良センターでの増殖体制

国内での飼料作物公的育成品種の増殖は、家畜改良センターの十勝、長野及び熊本の3牧場で集中的に行われています。我が国では南北に長い国土条件から、それぞれの地域の気候に合った様々な草種・品種が利用されており、3牧場でこれらの全てをカバーできるよう分担して増殖を行っています。

家畜改良センター 本所 熊本牧場 長野牧場 十勝牧場

種子増殖の流れ

種子増殖の流れ。新品種の育種、国内でもと種子の増殖、海外での増殖の画像

播種

シードドリル、バキュームシーダなどの機械により条播または点播で播種しますが、初期生育が遅く雑草との競合に弱い草種については、育苗してから定植を行います。
飼料作物の多くは他の個体の花粉によって受粉する他殖性植物であることから、近くに受粉の恐れがある同じ草種が生育していると、受粉が簡単に起きてしまい、せっかく育種したその品種の遺伝的特性が変異してしまいます。このため、受粉の恐れがある草種の栽培ほ場との間に、作物毎に決められている隔離距離を確保するとともに、種子を生産するほ場においては、一定期間同じ草種の作付けを行わない前作禁止期間をもうける等の厳格な管理を行っています。

栽培管理

OECD品種証明制度では、雑草及び他作物が栽培している作物に直接・間接に悪影響を及ぼさない程度に少ないこと、種子伝染病に罹病してないことが規定されています。このため、生育初期は中耕作業機械を用いての除草や、作業機が入れなくなったり、作業機で除草しきれない場所は人力による除草を行います。また、葉の形や草丈が異なる異型の取り除きなども行い、品種の純度を維持しています。
マメ科牧草のアルファルファやシロクローバの受粉はハチの助けが必要なことから、ビニールハウスなどの施設の中でハチを放飼しながら栽培を行います。
播種作業の画像
播種作業
アルファルファのバケツ栽培(点滴式灌水)の画像
アルファルファのバケツ栽培(点滴式灌水)

収穫

種子が充分に熟すのを待ってコンバインで収穫します。収穫に使用するコンバインは、同じ草種の違った品種種子が混ざらないように、各品種の収穫作業が終了する毎に念入りに分解清掃を行います。
収穫する面積が小さかったり、コンバインによる収穫が困難な暖地型牧草のギニアグラスなど、草種によっては手刈りなど人手による収穫を行います。

精選

コンバインなどで収穫した種子は、乾燥機で十分に乾燥します。
乾燥が終了した種子には、茎や葉や小石などのゴミ(きょう雑物)や未熟な種子、雑草種子が混入しているので、これらを取り除いて混ざりもののない高品質な種子にするための精選作業を行います。
精選は、形、比重、大きさ、色などによって選別を行うため、それぞれの種子が持ち合わせている特徴によって数種類の精選機を組み合わせて行います。コンバインと同様に、同じ草種の違った品種の種子が混ざらないように、精選する品種が異なる毎に、徹底した分解清掃を行います。
汎用型コンバインによる収穫の画像
汎用型コンバインによる収穫
カラーセパレーター(表面の色による選別)の画像
カラーセパレーター(表面の色による選別)

検定

精選が終了した種子は、純度検査、発芽率検査及び事後検定等によって品質や品種純度の確認を行っています(OECD種子品種証明制度に基づく検定)。
純度検査の画像
純度検査
発芽率検査の画像
発芽率検査
このようにして厳格な管理のもとで生産された種子は、海外において、日本で飼料作物を栽培するための保証種子生産に向けられています。

(参考)公的育成品種の種子増殖の連携 ~ 新品種の育種と海外での増殖 ~

新品種の育種

育種機関による新品種の種子1kgを原原種子、原種子、保証種子250,000kgに増殖の画像

イタリアンライグラスの例の画像

良質な自給粗飼料を効率的に生産するためには、地域の気候風土に適した飼料作物品種を育成し、その普及を図ることが必要です。特に我が国は南北に長く延びる地形などにより、亜熱帯から亜寒帯に至る多様な気象条件下にあるため、様々な飼料作物の草種・品種が利用されています。そこで、全国の独立行政法人・公立の試験場では、地域に適した品種の育種を行っています。
これらの公的試験研究機関は、収量性に優れる、倒状に強い、病気にかかりにくいなどの優れた特性を持つ新しい品種候補を育成し、気候風土が異なる様々な地域での適応性を検定する試験(系統適応性検定)等の結果、優れた遺伝的特性を有することが認められたものを新品種(公的育成品種)として選抜しています。
なお、以上の公的育成品種とは別に、種苗会社においても、国内における栽培面積の多い草種の品種育成が行われています。

海外での増殖

育種機関による新品種の種子1kgを原原種子、原種子、保証種子250,000kgに増殖の画像

イタリアンライグラスの例の画像

我が国は多くの牧草が開花~結実期に当たる6~7月に梅雨となること、種子生産に必要な広大な用地の確保が困難であることなどから、農家段階まで供給し得るだけの種子量を国内の増殖のみによって確保することはできません。このため、国内で採種したもと種子を、収穫時期の降雨量が少ないなど気象条件に恵まれ、広大な用地の確保が可能な海外の採種適地に輸出して保証種子増殖(委託生産)を行っています。このように海外の種子生産業者と採種契約を結び、増殖した種子を再輸入して国内で利用する方法を、海外契約採種と言います。
我が国からはアメリカ(主にオレゴン州)、カナダ等へ多くの飼料作物種子が委託生産のため輸出されています。
飼料作物の多くは他殖性植物であることから、品種純度の維持には細心の注意が必要です。そこでわが国は、海外契約採種にあたって「OECD種子品種証明制度」を利用し、わが国と契約相手国との間を流通する種子の品種の真正性を相互に保証しあっています。
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