独立行政法人
家畜改良センター十勝牧場

家畜改良の推進、優良な種畜や飼料作物種苗の生産、供給等を通じて、
我が国の畜産の発展と国民の豊かな食生活に貢献することを使命としています。

飼料作物業務

飼料作物種子の増殖方法

最終更新日 2020/05/13

十勝牧場で行っている飼料作物種子の増殖方法について紹介します。

飼料生産と種子生産の違い

牧草の種子生産の場合、牧草等を扱うという点では飼料生産と同じですが、品種が保証される種子を生産することから、生産方法は大きく異なります。
表.種子生産と飼料生産の違い
種子生産ほ場 一般的な飼料生産ほ場
ほ場内の牧草の種類 1種類のみ 複数混在も可
収穫対象 種子 茎、葉などの植物体
収穫適期の目安 開花から30~35日頃 出穂期前後
利用目的 次世代増殖の元となる種子の生産 家畜の飼料
OG measurementの画像
種子生産ほ場は「目的とする1品種のみ」の種子を収穫します。
近辺に同種の植物があるとその花粉が対象品種に受粉し、本来の品種特性が失われることから、採種ほ場の一定距離内にある同種の植物を完全に除去します。
また、収穫時に雑草種子の混入がないよう、ほ場内の雑草を極力除去し、さらに精選作業においても雑草種子等を取り除くようにします。

牧草を飼料として収穫するときは茎や葉を目的としますが、種子生産の場合は穂が開花、受粉し種子が十分に登熟した頃に収穫します。

播種から収穫、越冬まで

十勝牧場で生産する牧草は、とうもろこしを除き、播種した次の年に種子の収穫を行います。また、牧草の多くは多年草であるため、2~4年、毎年採種を行う事ができます。
作業の流れは以下のとおりです。
multiplication cycleの画像
【ほ場の造成・播種】
seedingの画像
種子生産ほ場は、まず起土・砕土・整地を行い造成します。その後、基肥(苦土石灰や熔燐、鶏糞)を散布して播種を行います。原種子を生産するには生育中の除草や異型の淘汰を行う必要があるため、うね幅70~75cmの条播で栽培を行っています。播種量は200~500gと、一般的な飼料生産に比べかなり少量で、播種には野菜用の播種機やシードテープを用いています。
【ほ場管理・施肥】
weeding3の画像
種子生産ほ場は雑草による生育障害や雑草種子の混入を防ぐため、除草や中耕を行います。
除草は「雑草」と「前年に収穫した際にこぼれ落ちた種子が生育した株」を除去することを目的としています。収穫した際にこぼれ落ちた種子は栽培株とは世代が異なるため、取り除く必要があります。
除草する場所は「うねの間」、「株の間」、「ほ場の周囲」で、それぞれ作業方法は異なります。
「うねの間」は専用の除草剤散布機、中耕によって除草し、「株の間」は人力で雑草を判定して、掘り取りや除草剤のポイント散布により除草します。「ほ場の周囲」は周辺の同一草種から花粉が飛来する事が無いよう、耕起や掃除刈、除草剤散布による除去を行います。
除草は、採種にとって最も重要な作業の一つであり、多くの時間と労力をかけて実施しています。
【種子の収穫】
harvestworkの画像
収穫作業はコムギでも用いられている汎用型コンバインにより行います。種子の形状に応じたメッシュを装着し、茎や殻などを飛ばしたり、ふるい落としながら可能な限り選別を行います。
牧草種子は収穫のタイミングが重要で、早めに行うと水分が高く未熟な種子となり、遅すぎると自然落下により十分な採種量が得られません。
そのため、開花からの経過日数や種子の水分、牧草の色などを指標として、適期に収穫するよう努めています。
【秋の管理・越冬】
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種子収穫終了後は、ほ場内に茎や葉が多く残っていることから、ハーベスターで細かく刻んでほ場外へ持ち出します。この作業を行わないと蒸れによる植物株の枯死や越冬時に病害が発生したりと悪影響があります。
また、収穫後の牧草は来年も収穫する場合には肥料を与え翌年の収穫に備えます。
越冬後の株は3月末から4月はじめの春の訪れとともに萌芽し、引き続き種子の収穫に向けてほ場の管理作業を行います。

【種子の乾燥・精選・保存】
収穫した種子は水分含量が高く、そのままだと蒸れによる種子の死滅の原因となるため、通風乾燥を行います。
乾燥後の種子は「夾雑物」(茎・葉・粉じん・石・虫の死骸・異種子等)や「未成熟種子」が多く含まれるため、精選により種子の純度や品質を高める必要があります。
製品となった種子は袋詰め後、温度・湿度が一定条件下に保たれた種子保管庫にて貯蔵し、海外増殖等の需要に応じて発送されます。
drying and selectionの画像
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