独立行政法人
家畜改良センター

家畜改良の推進、優良な種畜や飼料作物種苗の生産・供給等を通じて、
我が国の畜産の発展と国民の豊かな食生活に貢献することを使命としています

家畜改良センターについて

理事長からのメッセージ

畜産をめぐる情勢

理事長  入江 正和の画像
ウクライナ情勢に伴う穀物価格の上昇による家畜用配合飼料価格の高騰や、原油価格の高騰による生産資材等の値上がりが、生産者の経営、引いては畜産物の安定供給に多大な影響を及ぼしています。
わが国畜産においては、自給飼料の確保・増産や、より効率的な飼養管理技術が、ますます重要となっていくと考えています。
また、豚熱や鳥インフルエンザなどの家畜疾病や、気候変動が背景とも言われる大雨などの自然災害が国内で頻発しており、これらに対応する公的機関のサポートの重要性が増している状況と考えています。

理事長  入江 正和              
(略歴:https://researchmap.jp/Irie-Masakazu

家畜改良センターの役割

このような畜産をめぐる情勢を考慮しつつ、家畜改良センターは「わが国における畜産の発展と国民の豊かな食生活に貢献すること」を使命とし、国内外を視野に入れ、ニーズやシーズに基づいた優良な種畜の提供等を行っております。
具体的に、当所が現在、取り組んでいる課題、成果を次にご紹介します。

1.全国的な視野に立った家畜・家禽の改良と種苗の増殖・検査

1)優良種畜の提供
当所における家畜・家禽の改良は、5年毎に農林水産大臣が定める家畜改良センター中期目標の達成に向け、当所の全国にある牧支場で新技術を導入しながら行っています。生産された優良種畜は都道府県や関係団体などを通じて農家に提供され、これらから生み出された家畜・家禽が品質の良い国産畜産物となって豊かな食生活に貢献しています。
改良の具体例を紹介しますと、乳牛では、酪農家が求める泌乳形質や体型に着目した改良を進め、種雄牛を供給しています。和牛では、遺伝的多様性にも配慮しながら、従来のサシ(脂肪交雑)だけでなく、脂肪質改良に役立つ遺伝子マーカーを利用しながら、種雄牛を造って供給しており、全国的な活躍が期待されています。豚では肉質トップクラスの種雄豚を造って供給しており、一昨年、民間での実用豚が全国の豚肉食味コンテストで最優秀に輝きました。地鶏では全国に存在する地鶏・銘柄鶏のうち7割に当所の種鶏が利用されているほか、民間の実用鶏が鶏肉コンテストで賞を得ています。また、めん羊や山羊、馬などの育種素材も提供しています。
今後も国際競争を意識し、国内のニーズやシーズに基づいた種畜を生産し、畜産経営や国産畜産物の高品質化に今後も継続して貢献していきます。
2)遺伝的能力評価
育種改良には多数の家畜・家禽と、その体型、発育、畜産物品質等の膨大なデータが必要です。当所は自場のみならず、関係団体や各県から家畜データの提供を受け、乳用牛では全国ベース(国際評価にも参加)で、和牛では各県と共同して、公平な基準で遺伝的能力評価などを行っており、畜産農家における種雄牛精液の選定や各県における種雄牛づくりに役立っています。
また、最近では、表形値を持たない若雄牛及び若雌牛についても、遺伝子型に基づく能力評価を行っています。このほかに、豚についても遺伝的能力評価を行い、種豚の能力向上に役立っており、今後も畜産技術情報として全国発信します。
3)飼料作物種苗の増殖・供給と検査
飼料作物では、わが国の気候風土に適した品種の普及が必要です。当所は国際的に認められた国内唯一の飼料作物種苗検定の公的機関で、また研究機関などで開発された飼料作物の元となる種子(原々種子)を厳密な管理の下で増やしています。これを種子会社などが海外増殖し、農家に供給しています。また優良品種の実証展示や栽培管理技術、種子品質検査技術の講習も行っています。

2.畜産新技術の実用化

以下に示すような畜産、特に家畜改良における実践的な新技術を、大学などの他機関とも積極的に連携しながら、開発、評価、応用し、普及させており、今後も力を入れていきます。
1)飼養管理技術
現在、国や都道府県、大学などの研究機関では飼養頭羽数が大きく減少していますが、当所は育種改良のため多くの家畜・家禽、飼料作物を保有し、飼養管理、栽培管理などの実践的な新技術を開発・評価できる貴重な場にもなっています。
例えば、肉用牛においては、代謝プロファイルテストを取り入れた繁殖雌牛の飼養管理技術を確立し、繁殖成績の改善を実証しており、学会や産業界で注目される実践的成果になっています。
さらに短期肥育技術や放射性セシウムの体内蓄積動向などを検討し、また搾乳ロボットやIoTを用いた分娩管理などスマート農業に役立つ実践的な新技術情報等を今後も提供していきます。
2)遺伝子解析技術
家畜の育種改良は統計遺伝学的手法に加え、ゲノム情報(遺伝子は操作せず、生まれつきの情報)を加味した評価方法になりつつあります。
既に当所では肉用牛で脂肪質改良に役立つ遺伝子マーカーを発見し、肉用牛の選抜に適用し、特徴ある種雄牛として選抜されています。多くの家畜、家禽からの高度な遺伝子解析ができ、さらに実際の育種現場に実践できるという当所ならではの特徴を活かした成果も多く出しており、今後さらなる発展が期待されています。
3)肉質評価技術
食味の良い肉作りはわが国独自の特徴ともいえ、当所の肉質評価技術(官能評価技術や各種理化学分析技術)は実践的で高度です。肉質評価値は速やかに家畜改良に活かしていますし、さらに新たな肉質評価指標も検討しています。
当所で開発した近赤外光ファイバ法(予測ソフト)は、牛肉流通ラインで迅速かつ簡易に、食味に関連するオレイン酸など脂肪質を評価でき、全国各地で利用されており、超音波技術同様、国際的にも珍しい先端的事例です。
また日本食肉格付協会と連携して豚肉の食味に大きな影響を及ぼす豚脂肪交雑基準を開発し、実用化しました。さらに輸出拡大に向け外国人の嗜好性調査でも成果を挙げています。
4)繁殖技術
効率的な家畜の増産と改良を可能とする超音波画像装置を用いる牛の経膣採卵と組み合わせた体外受精技術は既に普及段階に入っており、子牛の登記・登録も可能なことから、当所の得意技術として産官などから多くの研修生を受け入れています。
国際的にもトップクラスといえる豚胚のガラス化保存技術や非外科的胚移植技術は、試験段階から実用化段階に移りつつあり、効率的な遺伝資源の保存や口蹄疫や豚熱など感染症を抑制する手段として今後の発展が期待されています。

3.牛の個体識別(トレーサビリティ)業務

国内のすべての牛には個体識別番号が付けられており、ネットで検索することにより、各牛の生年月日や品種、性別、異動履歴などがわかるようになっています。この番号は精肉の包装ラベルにも記されており、精肉から牛の生産現場まで遡って追跡することができ、国産牛肉に信頼性を与えるシステムとして活用が広がっています。
当所は法令に基づき、この個体識別のためのデータを収集し、管理し、HPで検索可能な形で公表しています。また、収集したデータは牛の管理者や都道府県、農協等の要望にあわせ、様々な牛個体識別情報として提供しており、飼養管理等いろいろな場面で幅広く利用されることを期待しております。

4.技術の普及と指導、外部支援

畜産技術を伝えるため、研修施設を備えて各種の研修会や講習会を実施しており、全国の産官の技術者や、海外からも多くの畜産行政幹部などが集まり学んでいます。
また、当所では種畜検査や種苗検査など法律に基づく全国的な検査を行っています。さらに各地における家畜伝染性疾病や自然災害の発生時には、畜産に関する物的、人的支援を行っています。

将来に向けて

センターは、「食料・農業・農村基本計画」、「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」や「家畜改良増殖目標」等の実現に向けた政策実施機関としてその役割を果たすとともに、わが国畜産の発展と国民の豊かで安全・安心な食生活の確保に貢献するため、今後とも役職員一同が一致団結して、積極的な業務運営を図っていきたいと考えておりますので、引き続きご理解・ご協力をよろしくお願いします。

令和5年10月  独立行政法人 家畜改良センター理事長  入江 正和   

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