家畜改良

岩手牧場データ紹介

最終更新日 2018/06/07
牛繁殖業務用保定枠の改良・製作
牛保定用枠は、通常、削蹄用または治療用として設計・使用される場合が多く、繁殖業務専用として設計・使用されているものはほとんど見られない。しかしながら、繁殖業務、なかでも受精卵移植、採卵および生体内卵子吸引法では、保定枠内での牛の動きにより作業に大きな影響を受けることが多い。そこで、技術者が迅速且つ安全に繁殖業務を実施することができるように、既存の保定枠を基にして、牛の動きを抑えることが可能な繁殖業務専用の保定枠の改良を試みた。
改良点
  1. 左右の動き防止
    片側面の柵を可動式とし、牛の側面から胴全体を押さえつけることにより左右の動きを防止した。可動柵は5cm毎にストッパーを取り付け、様々な横幅に対応可能とした。さらに、可動柵の支点部分にカーブをつけ、確実に保定できるようにした。なお、この可動柵は緊急時にもレバーひとつで解除できる方式とした。
  2. 前後の動き防止
    前方をスタンチョン方式とすることにより、人の通り抜けがスムーズとなり、また牛の両肩端部分をスタンチョンで押さえることができ、前方への動きを止めることができた。後方については、牛のサイズに合わせて綱を張る方式とし、縛ることなく、容易に着脱できるよう後方柱にフックを取り付けた。
  3. 下方への動き防止
    市販のチェーンブロックを枠上部に取り付け、腹部に回したベルトを引き上げることにより、牛の座り込みを防止した。また、尾椎硬膜外麻酔により直腸内にエアーが進入した場合も腹部ベルトを上げることにより、術者一人でもエアーを抜くことができるようになった。
  4. 作業台の設置
    繁殖作業に必要な消毒用アルコール綿やシリンジ、拡張棒等器具を置いておく着脱式の台を設置した。このことにより、術者が必要な器具等を手元に置いておくことが可能となった。
ホルスタイン種未経産牛における採胚時期の違いによる採胚成績
岩手牧場では、乳牛の育種改良における世代間隔の短縮を図るために、未経産牛からの採胚を行っている。その取り組みの中で、より早い時期での血統の確保並びに未経産ドナー本牛の適切な時期(17ヶ月齢以内)での受胎を確保するため、年々採胚時期を早めているが、それに伴い採胚成績が低下している傾向がある。
そこで、過去の採胚成績を用いて、現状を把握するとともに適切な過剰排卵処理実施時期について検討をおこなった。
材料及び方法
平成19年1月から平成21年10月の間に、岩手牧場で過剰排卵処理を実施したホルスタイン種未経産牛(12~15ヶ月齢、体重:329~554kg)106頭延べ212回の採胚成績データを用いた(1頭につき2回実施)。
処理方法は、FSH4日間の漸減投与とし、4日目の朝にPGF2αを投与し、発情確認後2回のAIを実施した。胚回収はAI後6日目に実施した。また、処理に対する卵巣反応を確認するために、採胚日前日に超音波診断装置により黄体数を確認した。回収胚のステージおよびランク付けについては、IETSマニュアルに沿って実施した。
結果
年度毎の採胚成績の推移について、採胚実施日齢は1回目、2回目共に年々早まっており、それに伴って卵巣反応が低下し、回収胚数、正常胚数も同様に減少している傾向がみられた。
そこで、採胚日齢毎の成績について検討した。1回目については、採胚実施日齢が進むにつれて、回収胚数、正常胚数及びAランク胚数が徐々に増加していた。2回目については、1回目ほど明確ではないが同様の傾向が見られた。採胚後の未経産ドナー本牛の受胎までにかかった日数については、採胚実施日齢が進むにつれて増加していた。しかし、採胚実施日齢が早いものについては、受胎までに要するAI回数が増加していた。
考察
早い時期で処理を開始しても、未経産ドナー本牛へのAI回数が増加するとともに、1回目の採胚成績も低くなることが示唆された。逆に、正常胚の確保のために開始時期を遅らせると、未経産ドナー本牛の適切な時期での受胎が確保できなくなることも明らかとなった。以上より、未経産ドナー牛の1回目の採胚実施時期については、390~409日程度が適切であると考えられた。
 
 
超音波画像診断装置を用いた早期妊娠診断及び早期胚死滅についての検討
岩手牧場では、ホルスタイン種の育種改良業務を行っており、過剰排卵処理及びOPU-IVFにより胚を生産し、経産牛・未経産牛への移植を実施している。 移植後、再発情が認められない個体について超音波画像診断装置を用いて早期妊娠診断(以下、早妊)を実施しているが、受胎確認後の早期胚死滅(Early Embryonic Death 以下、EED)が相当数出現することが分かってきた。
そこで、超音波診断装置を用いた早期妊娠診断法を検証するとともに、移植胚の状態や早妊時の胎子の状態等を調査し、EEDの原因について検討した。
材料及び方法
平成20年4月から平成22年8月の間に、岩手牧場で胚移植を実施したホルスタイン種1449頭のデータを用いた。超音波診断装置は、トリンガV50Sリニア(オランダ イザオテ・パイメディカル社製)を使用した。
胚移植を実施後、発情回帰が確認されなかった個体について、移植前の発情から30日目に早妊を行い、60日目に受胎を再確認する意味も兼ねて胎子性判別(以下、胎性)を行った(図1)。早妊では、胎子の大きさ、胎子の心拍数、移植側黄体の大きさ等について調査を行った。早妊で受胎が確認されたが、その後胎性までの間に胎子の死滅や発情回帰が確認されたものをEEDとした。
結果
移植した1449頭のうち763頭(52.7%)が早妊で受胎と判定された。不受胎の確認状況を表1に示した。早妊時に不受胎が確認された個体の割合は34.4%であった。表2では、EEDの発見状況を示した。99頭(13.0%)がEEDと判定され、発情が回帰した個体は68.7%、胎性時に空胎であった個体及び胚が死滅していた個体は31.3%であった。表3では、移植胚の状態別のEED割合を示した。いずれの移植胚においてもEEDの発生に差は認められなかった。表4では、早妊で受胎が確認された際の胎子や黄体の状態別のEED割合を示した。胎子の心拍数が少ない、または胎子が小さいなど胎子に問題がある場合、問題が無かった場合と比較し有意(p<0.001)に高い割合でEEDの発生がみられた。また、同様に受胚牛の黄体に問題がある場合も、問題が無かった場合と比較し有意(p<0.05)に高い割合でEEDの発生がみられた。
考察
近年発情徴候が不明瞭な牛が多くみられるが、早妊を実施することにより、早期の受胎確認だけではなく不受胎牛の摘発に有効であることが示された。また、早妊後13.0%の個体でEEDが発生し、そのうち31.3%は60日目の胎性時に発見されたことから、超音波妊娠診断を行う場合は複数回の診断が必要であることが示唆された。さらに、早妊時に胎子や黄体に問題がある個体は、高い割合でEEDが発生することから、その後の管理を注意深く行う必要があると考えられた。
 
 
バイオプシー方法の違いが性判別胚の受胎率に及ぼす影響
岩手牧場では、過剰排卵処理及びOPU-IVFにより胚を生産し、希望した雌雄を効率的に得るために胚の性判別を実施している。性判別胚のバイオプシー法について、マイクロピペットを用いた手法により受胎率の向上が図られるとの報告があることから、従来の切断によるバイオプシー法と併用して性判別を実施し、移植後の受胎率について比較検討を行った。
材料及び方法
平成20年4月から平成22年8月の間に岩手牧場のホスルタイン種より採胚した桑実胚から胚盤胞期の胚で、A及びBランクの胚を用いた。
胚のバイオプシーは、内径を20~40μm程度に加工し先端を研磨したマイクロピペットにより数個の細胞を採取する吸引法(図1)と、マイクロマニピュレーターに取り付けたブレードで10~15%程度の栄養膜細胞を押し切る切断法(図2)により行った。
胚の性判別はLoopamp法により実施し、バイオプシー後の胚は20%牛胎子血清添加TCM199中で3時間の培養を行い、その後新鮮移植またはダイレクト法により凍結保存を行った。凍結保存には、0.4%BSAを添加したD-PBSに0.1Mシュークロース及び1.8Mエチレングリコールを添加した凍結保存液を用いた。
受胚牛は自然発情で発情兆候を認めたホルスタイン種を用い、発情後6日目から8日目に移植を実施した。
妊娠診断は超音波画像診断装置を用い、移植前の発情から30日目に早期妊娠診断(以下、早妊)を、60日目に胎子性判別(以下、胎性)を実施することにより確認した。早妊で受胎が確認されたが、その後胎性までの間に胎子の死滅や発情回帰が確認されたものを早期胚死滅(Early Embryonic Death以下、EED)とした。
結果
表1に異なるバイオプシー方法による受胎率の比較を示した。吸引法によるバイオプシー胚を新鮮移植した場合の受胎率は54.6%(65/119)であり、切断法による受胎率49.3%(106/215)と比較し大きな差はみられなかった。一方、吸引法によるバイオプシー胚を凍結融解後ダイレクト移植した場合の受胎率は44.3%(27/61)であり、切断法による受胎率29.7%(11/37)と比較し、有意差はないものの吸引法が高い受胎率を示した。
また、表2に異なるバイオプシー方法によるEEDの発生割合を示した。バイオプシー胚を凍結融解後ダイレクト移植した場合、切断法において吸引法と比較し有意(P<0.05)に高い割合でEEDの発生がみられた。
考察
吸引法によるバイオプシーでは、切断法と比較し採取する細胞数が少なく、胚へのダメージが少ないと考えられる。このことが、凍結胚の受胎率に影響を及ぼしていると考えられた。また、バイオプシー後の胚の回復を図るため3時間培養を行ったが、吸引法、切断法ともに十分な胚の回復がみられ、受胎率にも影響はなかった。
一方、胚盤胞以降の胚は細胞間の結合力が高く吸引法は適さないことから、胚のステージに応じて吸引法と切断法を使い分けて性判別を実施することが必要である。
 
過剰排卵処理時におけるGnRH投与時期の検討
岩手牧場では、乳牛の育種改良・増殖を目的に、過剰排卵処理により胚を生産しレシピエントへの移植を行っている。
高能力牛のから効率的に正常胚を生産することは改良の推進に重要であることから、より多くの正常胚を確保することを目的に、過剰排卵処理時におけるGnRH投与時期について検討を行った。
材料及び方法
平成23年1月から12月の間に、岩手牧場で過剰排卵処理を実施したホルスタイン種経産牛69頭、未経産牛93頭の採胚成績データを用いた。
処理方法は、FSH4日間の漸減投与とし、4日目の朝にPGF2αを投与し、発情確認後2回のAIを実施した。胚回収はAI後6日目に実施した。
排卵を促進するため、GnRH(酢酸フェルチレリン100μg)を人工授精時に投与する群(以下、旧プログラム群)と、過剰排卵処理5日目に投与する群(以下、新プログラム群)を設定した(図1)。
結果
採胚結果を表1に示した。未経産牛では、旧プログラム群と新プログラム群の間で有意な差はみられなかったが、経産牛では、新プログラム群が旧プログラム群と比較し、回収卵数、正常胚数が有意(P<0.05)に高い結果となった。
考察
過剰排卵処理におけるGnRH投与は、LHサージによる排卵を促すことを目的に行うが、経産牛は泌乳ストレスや老齢など様々な要因によりホルモン分泌量が低下していることから、GnRHの投与は未経産牛と比較し、より効果が高いと考えられる。また、投与のタイミングは、新プログラムの方が適していると考えられる。
 
乳用牛における超音波画像診断装置を用いた黄体診断と胚移植結果との関係
独立行政法人家畜改良センター岩手牧場(以下、岩手牧場)では、胚移植を活用したホルスタイン種の育種改良業務を実施している。胚移植前の黄体診断は通常直腸検査による触診で行っているが、ポータブルタイプの超音波画像診断装置により黄体診断を実施したところ、様々な形状の黄体が存在することが分かってきた。そこで、胚移植及び早期妊娠診断(以下、早妊)時に超音波画像診断装置を用いて黄体診断を実施し、移植後の受胎状況との関連性を検証した。
材料及び方法
平成23年10月から平成24年9月の間に、岩手牧場で胚移植を実施したホルスタイン種未経産牛176頭、経産牛250頭、計426頭のデータを用いた。受胚牛は自然発情で発情兆候を認めたもので、発情後6日目から8日目に、黄体側子宮角に1胚を移植した。移植胚には桑実胚から胚盤胞で、IETSマニュアルのコード1の新鮮胚及び凍結胚を用いた。
超音波画像診断装置は、トリンガV50Sリニア(オランダ イザオテ・パイメディカル社製)を使用した。超音波画像診断装置を用いた黄体診断は胚移植時及び早妊時に実施した。過度の刺激を避けながら卵巣を描出し、黄体の直径が最も大きく描出された時点でランク付けを実施した。
胚移植時の黄体ランクは、内腔が無いものをA、内腔が黄体の直径の1/4程度のものをB、同様に2/4程度のものをC、3/4程度のものをDとした。(図1)
胚移植後、発情回帰が確認されなかった個体について、胚移植前の発情日から30日目に早妊を行った。早妊で受胎が確認されたが、60日目の超音波画像診断装置による胎子性判別までの間に胚の死滅や発情回帰が確認されたものを胚死滅とした。
結果
表1に黄体ランク別の早妊時の受胎率を示した。各区において有意な差は見られなかった。受胎牛の胚移植時及び早妊時の黄体内腔の変化について表2に示した。胚移植時に黄体内腔があったもののうち約90%の内腔が消失した。また、胚移植時の黄体内腔が大きいほど、早妊時に黄体内腔が残存している割合が高い傾向がみられた。次に、黄体ランク別の胚死滅の割合を表3に示した。早妊時に黄体内腔があったもののうち、黄体ランクDで胚死滅が認められた。また、黄体ランクDはA(p<0.05)及びC(p<0.01)と比較して有意に高い割合で胚死滅の発生がみられた。
 
過排卵処置牛の出血性貧血、および摘出子宮からの採胚に関する報告
独立行政法人家畜改良センター岩手牧場ではホルスタイン種の育種改良業務を行っており、過排卵処理及びOPU-IVFにより、胚の生産、移植を実施している。
通常通りの過排卵処置を実施した12ヶ月齢の未経産ドナー牛が、採胚を予定していた当日に重度の貧血症状を呈し死亡したため、死亡原因を究明するために開腹することになった。前日の超音波画像診断装置による卵巣検診により左右両卵巣に多数の黄体が確認されていたため、開腹した際に子宮を摘出し、摘出した子宮からの胚の回収を行うこととした。回収された胚は培養後に移植し、受胎にまで至った。そこで、子宮摘出から採胚、胚移植までの経緯を報告する。
材料及び方法
平成26年10月9日、採胚予定日当日の朝、12ヶ月齢未経産ドナー牛が起立不能となり、重度の貧血を呈し死亡した。この未経産ドナー牛において、子宮摘出、採胚、胚培養、胚移植を行った。
 
・開腹と子宮・卵巣摘出の方法
左側を下にした伏臥の状態で死亡していたため、右膁部を約20cm切開し、腹膜を切り開いた段階で、腹腔内に多量の出血が貯留しているのを確認した。腹腔内を触診したところ、卵巣周囲に大きな血餅が付着しているのが確認出来た。左手で子宮間膜を裂き、子宮本体をなるべくフリーな状態にしてから子宮頸管を握り子宮を保持し、右手に鋏を持ち、外子宮口と外尿道口の中間辺りを切断した。左手で卵巣を保持しながら、卵巣を腹腔内で吊っている卵巣間膜を右手で持った鋏で切断。これを左右の卵巣で行ったのち、子宮・卵巣をまとめて体外へ出し、バットに移した。

・採胚と回収胚の処理
子宮を室内に運び、通常の採胚で使用するバルーンカテーテルを子宮角内に挿入・留置し、直視下での採胚作業を行った。25個回収し、内訳は、変性胚(変性部分が50%以上の桑実胚)4個、未受精卵20個、透明帯1個で、変性胚4個は38.5℃、5%CO2、20%子牛血清添加TCM199中で培養することにした。

・胚移植
培養24時間後に胚盤胞にまで発生が進んだ1個、及び48時間後に胚盤胞まで発生が進んだ2個を移植した。
結果
死亡原因は卵巣からの多量の出血により、出血性貧血にて死亡したことが判明した。卵巣からの出血は多数の黄体の突破口からの出血であることが確認出来た。
培養24時間で胚盤胞にまで発生が進んだ胚は、移植23日後(胎齢30日)、超音波画像診断装置により受胎していることが確認された。他の2胚(培養48時間後に移植)は不受胎であった。受胎した胚は、胎齢60日の再検診の際も、妊娠が継続していることが確認された。
考察
過排卵処置を行った牛が卵巣からの多量の出血によって出血性貧血を起こし、死に至るということを初めて経験した。卵巣が過剰に反応している場合は、重篤な貧血になるケースも考えられることから、人工授精時から反応状況を注意深く観察し、ドナー牛の健康状態を把握しておく必要があるのではないだろうか。また、人工授精後に貧血症状が認められた場合は、止血剤の投与等の早目の処置を行えば、ドナー牛が死に至ることを回避させる可能性はある。
ドナー牛が採胚予定日に死亡し通常の採胚作業が出来なくなった場合、ひとつの選択肢として子宮を摘出し、取り出した子宮から採胚することは、十分に胚回収の成果が期待出来る。
死亡直後に摘出した子宮からの採胚で、回収されたものが変性胚であっても、培養により発生の進むものであれば、移植後受胎に至る可能性があり、育種改良業務に携わる者としては、育種業務に供する家畜にいかなる事態が発生しようとも、様々な可能性を追求し、出来る限りのことを実践すれば、自ずと成果が現れることを実感した。
 
泌乳最盛期におけるホルスタイン種経産牛の採卵成績と牛群検定成績との関係
独立行政法人家畜改良センター岩手牧場(以下、岩手牧場)では、ホルスタイン種の候補種雄牛作出を目的とした育種改良事業を実施しており、育種システムの一環で泌乳最盛期の経産ドナーから採卵を行っている。
また、一方で育種改良の推進を目的に牛群検定事業に参加しており、膨大なデータの蓄積がある。
そこで、ドナーの採卵成績と牛群検定成績を検証することにより、その関連性について検討した。
材料及び方法
平成23年3月から平成27年8月の間に岩手牧場で分娩したホルスタイン種2産次ドナー97頭のデータを用いた(ドナーの初産平均305日検定成績は、乳量-12,294kg、F-3.87%、P-3.25%、SNF-8.85%)。
過剰排卵処理方法は、FSH38AUを4日間漸減投予し、3日目の夕方にPGF2αを、4日目の朝にGnRHを投与した。発情確認後2回のAIを実施し、採卵はAI後6日目に行った。胚のランク付けは、IETSマニュアルに従い実施した。
牛群検定成績は、各ドナーの初回検定成績(以下、初回検定)、採卵直前の検定成績(以下、直前検定)、採卵直後の検定成績(以下、直後検定)を用いた。データの検証には、蛋白質率(%)及びMUN(mg/dl)を用いた。蛋白質率(%)が2.8~3.4%及びMUN(mg/dl)が8~16の範囲にあるものを適正群とし、それ以外を不適群とした(図1)。
結果
ドナー97頭の分娩後採卵日数は69.6±4.3日であった。97頭のうち、難産、第四胃変位、ケトーシス等の臨床症状を示したものは22頭おり、臨床症状を示さなかった75頭と比較して正常胚数及びAランク胚数が有意に少なかった(p<0.05及びp<0.01)(表1)。そこで、臨床症状を示さなかった75頭について、初回検定、直前検定、直後検定の蛋白質率(%)及びMUN(mg/dl)を比較検討したところ、初回検定では、適正群は不適群と比較しAランク胚数が有意に多かった(p<0.01)(表2)。また、直前検定では、適正群は不適群と比較し未受精卵数が有意に少なかった(p<0.001)(表2)。直後検定では、適正群と不適群の間に有意な差はみられなかった(表2)。
考察
分娩時の難産や周産期疾病は、採卵成績に影響を及ぼすことが明らかとなった。また、初回検定で蛋白質率(%)及びMUN(mg/dl)が適正な群は、採卵成績が良好であった。このことから、分娩前後の飼養管理を適正に行うとともに、牛群検定成績を有効に活用することにより、採卵成績が向上する可能性が示唆された。