平成18年度第1回研究講座の概要
中部日本養鶏研究会(会長:独立行政法人家畜改良センター岡崎牧場長、末國富雄)は、平成18年11月15日、岡崎市竜美丘会館で研究講座を開催しました。
冒頭の挨拶で末國会長は、「1ヶ月程前に開催された『たまごシンポジウム』にを受け、国産鶏を考える上で4つの点を重要にしたい。それは、1.食の多様化に対応したものであり、卵かけご飯などの様々なニーズに対応できること、2.外国種鶏の輸入防止にもつながる原種鶏を持つことの大切さ、3.海外での鳥インフルエンザ発生によるヒナの供給不安に対応、4.鶏の改良を続けることで養鶏技術の伝承が可能となることである。そして、当研究会は、きちんとした技術の体系付けの研修の場として継承していきたい」と述べました。
今回は、食の安全・安心への消費者の関心の高まりを背景に、東京農業大学農学部畜産学科の信岡誠治助教授が「輸入鶏卵急増の現状と背景、その解決策へ向けた提案」について、また、農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課の原田和記抗菌性物質製剤係長が「食品に残留する農薬等に関する新しい制度(ポジティブリスト制度)について」について講演をしました。
研究講座(13:4516:55
 輸入鶏卵急増の現状と背景、その解決策へ向けた提案
 
信岡誠治助教授
(東京農業大学農学部畜産学科畜産マネジメント研究室)
去年の国内での高病原性鳥インフルエンザ発生により需給バランスから卵価が高騰し、割卵業者の殻付卵の緊急輸入で例年の10倍以上の1万4千tの輸入量となり、加工卵14万t、調理済卵6万3千t(推定)と合わせて合計22万tの輸入量に達し、これは、世界最大の鶏卵輸入国であるドイツの24万6千tに次いで世界第2位の鶏卵輸入国となったと報告しました。
一方で、鶏卵需要の4分の1が加工卵市場であり、そのうちの3割は輸入が占めており、加えて、国産の液卵不足に対応して全卵粉へのシフトが見られ、全卵粉の輸入急増等危険な状態にあるため、輸入卵への有効な対策として、国内の液卵加工メーカーの原料卵の安定的取引関係を築くことが大切であると述べました。このためには、鶏卵認証制度と日本版ECI(エッグ・クリアリング・ハウス・インク:JECI)を同時に構築していく取組を行い、JECIとして、全国又は一定のゾーンで交渉し、新たな加工原料卵相場を作っていく方法が必要であると訴えました。
また、増加している調理済み鶏卵への有効な対策はあまりないものの、その実態を解明し、一つ一つ克服していくしかないとも述べられ、例として、調理済み鶏卵の輸入で最も多いものに焦点を絞り、国産鶏卵での代替可能性を探るなど、対策を実施していくべきであると訴えました。
最後に、信岡助教授の研究室では飼料米のフィージビリティ(実現可能性)試験を行っており、飼料米を輸入飼料トウモロコシの代替として「国産飼料」として供給することで、国産鶏卵を差別化できないか、実際に飼料米作りを依頼して研究を行っていることを紹介し、各県養鶏関係試験場に対し共同研究への参加を訴えました。
 ポジティブリスト制度について
 
原田和記抗菌性物質製剤係長
(農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課)
従前の食品衛生法(ネガティブリスト制度)と食品衛生法改正に基づき、本年5月29日から施行されたポジティブリスト制度の違いを説明されました。
従前の規制では、食品の成分に係る規格(残留基準)が定められていないものは、食品中に農薬等が残留していても基本的に販売禁止等の規制が係りませんでしたが、ポジティブリスト制度では、別途規格(残留基準)が定められていないものに対しても規制が係る点について説明されました。一方で、特例として厚生労働大臣が指定する「人の健康を損なうおそれのないことで明らかである物質(65農薬等)」については、ポジティブリスト制度の対象外となった点についても説明されました。
農林水産省としては、ポジティブリスト制度の施行に伴い、動物医薬品等の使用が食品衛生法違反となることを防ぐ為に、1.農場での家畜の適切な飼育管理として、投与薬剤の投与群への表示と薬剤使用記録の作成と保管を徹底すること、2.飼料添加物・動物医薬品を使用する際は、最新の用法・用量・休薬期間の確認と遵守が大切であること等を、農家等に対して引き続き周知していることを説明されました。
また、薬剤使用記録の作成と保管は、農場と流通・加工・販売業者等との信頼関係の構築を図ると共に、万が一、食品衛生法違反が生じた時の原因究明、回収範囲の特定等に役立つと説明されました。
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