よくわかる用語解説

家畜の改良

最終更新日 2020/01/22
家畜改良関連用語

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遺伝的能力(いでんてきのうりょく)

親から子孫に遺伝していく形質の能力のことです。形質とは、例えば肉用牛では、発育形質の「生時体重」や「増体量(発育の早さ)」、産肉形質の「脂肪交雑(サシまたは霜降り)」や「ロース芯面積」、繁殖形質の「分娩間隔」や「妊娠期間」などです。
肉用牛の場合、「増体」と「肉質(脂肪交雑、肉の色、脂肪の質など)」の2つが特に重要です。また、この他に、「飼料の利用性(飼料効率)」や「繁殖性(受胎のし易さ)」、「連産性(毎年子牛を産む)」、「哺育(子育て)」、「放牧適性」などの能力も求められます。

 

枝肉(えだにく)

肉牛をと畜して、頭部、四肢端()、皮、内臓、尾などを取り除き、取引用に仕上げた骨のついた状態の肉のことで、通常、格付・取引までは背骨部分で左右に切断した2分体(半丸枝肉)にして冷蔵庫に保管されます。

 

か行

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

改良(牛の)(かいりょう)

良い種畜を作るために、選抜・淘汰を繰り返し、良い牛を残しながら、望ましい形質の遺伝的能力を高めていくことです。

 

格付(牛枝肉の)(かくづけ)

食肉の格付は、(公社)日本食肉格付協会が全国各地の食肉センター等で行っており、牛の枝肉では、「歩留(ぶどまり)等級」と「肉質等級」に分けて判定されます。「歩留等級」は、枝肉重量に対する部分肉(枝肉から骨や余分な脂肪を取り除いたもの)の割合で、A、B、Cの3段階に判定されます。「肉質等級」は、「脂肪交雑等級」、「肉の色沢」、「肉の締まり及びきめ」、「脂肪の色沢と質」の4項目でそれぞれ5~1の5段階に判定され、各項目のうちの最も低い等級が総合的な肉質等級になります。結果は、「歩留等級(A~C)」と「肉質等級(5~1)」の組み合わせで、A-5(最高の等級)からC-1までの15段階に判定されます。

 

家畜改良事業団(かちくかいりょうじぎょうだん)

農林水産省の外郭団体で、後代検定による優良種雄牛の選抜や、選抜された牛を繋養して凍結精液を製造し、全国に販売する等の事業を行っています。

 

間接法(かんせつほう)

肉用牛の後代検定の一手法で、1頭の候補種雄牛の調査牛(去勢)を検定成績承認機関(各登録協会)の認定した検定場に集めて同一条件下で肥育(集合検定)し、飼料効率、肉量及び肉質等の調査を行う方法です。肥育期間は、黒毛和種の場合、364日(54週=12ヵ月)間で、終了時の月齢は約20ヵ月齢です。 (後代検定、現場後代検定法の項参照)

 

黒毛和種(くろげわしゅ)

日本で品種改良された和牛の品種の一つです。
平成29年現在、肉用種は和牛を中心に166万頭飼養されていますが、その97.2%(162万頭)を占めています。
他の和牛より増体能力はやや劣るものの、肉が霜降りになる(サシが入る)ことが大きな特徴で、その品質の高さは海外でも認められています。有名な松坂牛(まつさかうし)や前沢牛(まえさわぎゅう)、米沢牛(よねざわぎゅう)などは、この黒毛和種です。

検定済種雄牛(けんていずみしゅゆうぎゅう)

肉用牛の検定手法には「直接検定」と「後代検定」があります。検定済種雄牛とは、一般的には「後代検定」を終了し、産肉能力が判明して、成績が優秀な種雄牛として選抜された雄牛のことで、「直接検定」だけを終わった牛は該当しません。

現場後代検定(げんばこうだいけんてい)

肉用牛の後代検定の一手法で、1頭の候補種雄牛の調査牛を数カ所の農家や肥育施設で肥育調査を行う方法です。間接法と違うのは、調査牛が去勢牛だけでなく、雌牛も使い、黒毛和種の場合、肥育期間(出荷月齢が去勢29ヵ月齢未満、雌32ヵ月未満)も20ヵ月齢程度で間接法と比べて長く、一般的に飼われている肥育牛とほぼ同じ肥育期間になります。(後代検定、間接法の項参照)

後代検定(こうだいけんてい)

牛の能力検定で、候補種雄牛の子畜を生産し、その子畜の成績を基に、間接的に候補種雄牛の遺伝的能力を判定(推定)する方法です。肉用牛の場合、増体能力や肉質が重要な判定項目となります。また、重要性は認識されながら、これまで群ごとでしか把握できていなかった飼料の利用性についても、個体ごとに計測し、成績の判定に用いることも検討されています。
なお、肉用牛の後代検定には間接法と現場後代検定法の2つの手法がありますが、間接法は肥育期間が短く、仕上がり前にと畜されることが多いため、肥育結果が流通している牛肉と乖離が見られることが問題となったことから、肥育期間のより長い、一般的な飼い方に近い現場後代検定法に移行しつつあります。

 

候補種雄牛(こうほしゅゆうぎゅう)

産肉能力検定を受ける雄牛のことで、「検定済種雄牛」として将来選ばれる前段階の候補の牛であることから、こう呼ばれます。

 

さ行

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

産肉能力検定(さんにくのうりょくけんてい)

種雄牛の能力を判定するために行われる手法で、雄牛の「増体」と「肉量」、「肉質」を判定します。肉用牛では「直接検定」と「後代検定」があり、主に、直接検定では「増体(発育の早さ)」や「飼料の利用性(飼料効率)」、後代検定では「肉量」や「肉質(脂肪交雑、脂肪の質など)」を調査します。

 

脂肪交雑(しぼうこうざつ)

筋肉組織への脂肪の蓄積具合のことで、一般には、「サシ」、「霜降り」と呼ばれるほか、「マーブリング」または「BMS」とも呼ばれています。枝肉の「格付」では脂肪交雑が判定項目の一つとされており、ロース(胸最長筋)及び周囲筋(背半棘筋・頭半棘筋)の筋肉内脂肪交雑状態を12段階に分類し判定しています。

増殖(家畜の)(ぞうしょく)

人工授精や受精卵移植などの技術を用いて、計画的に交配を行い、優良な種畜をたくさん増やしていくことです。

 

た行

 

 

 

 

 

 

 

 

直接検定(ちょくせつけんてい)

肉用牛の産肉能力検定の一手法で、能力を調査したい牛を対象に、餌の量などの管理方法を一定にし、検定期間(黒毛和種の場合、112日間)の増体能力や飼料の利用性などを調査します。ただし、これだけで種雄牛として使われることは少なく、凍結精液を生産する種雄牛は、さらに後代検定を行い、肉質を調査した後に選抜されます。

 
 

DG(デージー)

産肉能力検定の調査項目の一つで、1日当たりの平均増体量のことで、Daily Gainの略です。直接検定では最も重要な調査項目で、検定開始時から終了時までの体重の増えた量を検定日数で割って算出します。

 

な行

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

肉質(にくしつ)

肉用牛の肉質とは、脂肪交雑の程度、肉の色、肉の締まり、肉のきめ、脂肪の色、脂肪の質をいいます。格付では、脂肪交雑は、サシ(筋肉内脂肪)の度合いを12段階、肉の色と脂肪の色は7段階の判定基準で分類し、いずれも5つの等級に判定されます。

 

肉用牛(にくようぎゅう)

肉を生産するために飼われている牛の総称で、品種ではありません。肉用牛には肉専用種のほか、乳用種の雄子牛(去勢)や交雑種等も含まれます。(和牛の項参照)

 
 

日本短角種(にほんたんかくしゅ)

日本で改良された和牛の品種の一つです。
東北北部原産の肉用種で、この地方では古くから南部牛と呼ばれていた牛を基に、アメリカから輸入されたショートホーン種(乳用型と肉用型)などを交配して改良が進められたのが、日本短角種です。
放牧適性が高く、性質も温順で、繁殖用雌牛は冬期間もサイレージ等の粗飼料のみで飼養できます。このため、飼育農家にとっては、水田や畑作物の栽培で忙しい夏は山に放牧しておけばよいので、手間がかからない上、冬期間も低コストで管理できるという利点があります。
肉質は、黒毛和種に比べて霜降り(サシ)は少ないですが、増体が早く、脂肪の少ない赤身肉でヘルシーな牛肉として人気を集めています。

は行

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

肥育検定(ひいくけんてい)

後代検定の肥育調査のことです。検定では、能力を調べたい雄牛の後代(子牛)を肥育して親牛である雄牛の成績を判定するため、肥育期間中の増体(発育状況)と肥育終了後の枝肉調査が検定の主要部分となります。

 

BMS(ビーエムエス)

脂肪交雑のことで、Beef Marbling Score の略です。また、BMS-No.というのは、Beef Marbling Standard-No.の略で、脂肪交雑の程度を12段階に判定するモデルでの判定数値を表すものです。

 

平準化事業(へいじゅんかじぎょう)

家畜改良事業団が実施している事業で、正式名称は「肉用種雄牛産肉能力平準化促進事業」といい、候補種雄牛の後代検定を実施して、優良な種雄牛を選抜するものです。家畜改良センターでは、この事業に毎年10数頭の候補種雄牛を供給しており、このうち、数頭以上が検定済種雄牛として選抜され、全国に凍結精液が供給されています。

 
 

防疫(ぼうえき)

家畜に病気が発生しないように、外部からの侵入を防ぐ対策のほか、ワクチン接種、消毒などを実施しています。
奥羽牧場では、外部から入ってくる車両は、タイヤ周りを中心に消毒液を噴霧します。人については、防疫用の服(白衣やつなぎなど)に着替え、専用の長靴を履いていただきます。さらに、牛舎の入り口には、建物ごとに消毒槽を設け、長靴を消毒します。場合によっては、防疫服を再度着替えてもらうこともあります。
また、病気予防のためのワクチン接種、外部寄生虫駆除のための牛体への殺虫剤の塗布・噴霧、牛舎の定期的な清掃・消毒とともに、牛が病気に罹っていないか確認するため、血液や糞を採取して検査しています。

ら行

 

 

ロース芯面積(ろーすしんめんせき)

枝肉切開面(第6-7肋骨間)における胸最長筋の面積のことで、胸最長筋は、肋骨のすぐ上の背中側の背骨の両側にあります。

わ行

 

 

 

 

 

和牛(わぎゅう)

和牛とは、国内に古くからいる牛を基に品種として確立した「黒毛和種」、「褐毛和種」、「日本短角種」、「無角和種」の4つの品種の肉用牛のことです。このうち、黒毛和種が最も頭数が多いです。

なお、「国産牛」という用語もありますが、これは国内で生産された牛のことであり、和牛だけを指す言葉ではなく、乳用種等も含まれます。さらに、輸入された牛でも、日本国内での飼育期間の方が長ければ国産牛と表示して販売できます。