調査研究
乳用牛の繁殖性、抗病性、長命連産性などの向上
最終更新日 2023/08/08
 
乳用牛の繁殖性の向上

乳用牛の乳量や乳成分のような生産性は、飼養管理の改善と遺伝的改良により、飛躍的に向上しました。しかし、その反面、受胎率や空胎期間のような繁殖性の低下が問題となっています。1993年に62.2%であった平均受胎率は、2010年には44.7%と大きく下がっています。

家畜改良事業団「平成22年度受胎成績(初回受胎率)」より

家畜改良センターでは、遺伝子情報による繁殖性の優れた乳用牛の選抜手法の確立を目指しています。 そこで、受胎率に影響を及ぼす遺伝子を見つけるため、single nucleotide polymorphism (SNP 一塩基多型 )を目印として、受胎率とどのSNPが一番関連しているかを調査しています。具体的には、受胎率が42%以下のホルスタイン種192頭と、51%以上のホルスタイン種192頭を用いて、ウシの全 ゲノム をカバーする54,000個のSNPについて比較を行っています。

 

これまでに、受胎率に関連すると思われる染色体領域を6カ所検出しました。これらの領域について、 さらに分析を進め、受胎率に影響を及ぼす遺伝子の特定を目指しています。

なお、これまでに以下の遺伝子を特定しました。

·    乳房炎抵抗性に影響を及ぼすFEZL遺伝子(PNAS, 2006, 103: 6454-6459

·    過排卵反応性に影響を及ぼすGRIA1遺伝子(PLoS ONE, 2010, 5: e13817、特許第4756250号)

·    生時体重及び難産出現率に影響を及ぼすSLC44A5遺伝子(PLoS ONE, 2012, 7: e41267

 

 2006年4月22日 日本農業新聞」より

このような遺伝子情報を活用すれば、特定の形質の優れた乳用牛の選抜が出来るようになると期待されています。