よくわかる用語解説

繁殖技術

最終更新日 2018/07/12
繁殖技術関連用語

 

 

 

 

 

 

 

 

 

核移植(かくいしょく)

核を除去した卵子に、初期胚の割球や体細胞の核を注入する技術を核移植といいます。同じ遺伝子をもったクローン動物を生産する場合の根幹技術となっています。

過剰排卵処理(かじょうはいらんしょり)

牛は、1回の発情では通常1個の卵子が排卵されますが、人為的に受精卵を採取する場合、1作業で多くの受精卵を採取するため、事前にホルモンを投与して、複数の卵子が排卵されるようにするための処理を行います。このホルモン投与のことを過剰排卵処理といいます。

 

クローン(くろーん)

遺伝的に同じ遺伝子を持つ複数の個体を示します。核移植技術を用いることにより、人為的に生産可能となっており、優れた家畜の大量生産や絶滅危惧種の保護への活用が期待されています。クローンを作る方法の代表的なものは、「体細胞クローン」、「受精卵クローン」、「分割クローン」の3つの方法があります。

 

さ行

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自然交配(しぜんこうはい)

雌牛と雄牛が交尾して、子牛を生産する交配方法のことです。その方法は、雌牛の群の中に1頭の雄牛を入れる場合と、発情した雌牛のところに雄牛を連れて行く場合があります。ただ、自然交配の場合、1頭の雄が雌と交尾する頭数が限定されることや、雄牛を飼う経費が必要となるため、現在の子牛生産は、人工的に精液を雌牛の子宮に注入する人工授精が主流(95%以上)になっています。

 

受精卵クローン(じゅせいらんくろーん)

受精後8~32細胞まで分裂した受精卵を細胞1個ずつに分けて、その1つを核を取り除いた未受精卵と細胞融合し作成された胚をもとに生産された、同一の遺伝情報をもった個体のことです。

 

受精卵移植(じゅせいらんいしょく)

優秀な雌牛に過剰排卵処理を施して回収した受精卵を、他の雌牛(借腹牛)に移植(専用の器具を使って人工的に子宮内に受精卵を入れる)して優良な子牛を多数生産する技術です。
受精卵は、1回に5個程度回収され、移植による受胎率は50%程度です。

 

人工授精(じんこうじゅせい)

雄牛の精液を人が専用の器具を使って雌牛の子宮に人工的に注入して受胎させることで、日本の牛の95%以上はこの交配方法を利用して生産されています。使われる精液は、「生精液(新鮮なもの)」と「凍結精液(冷凍したもの)」がありますが、一般的には、凍結精液を融解して使用しています。

 

成熟培養(せいじゅくばいよう)

生体卵胞卵子吸引技術などで卵巣から取り出した未成熟の卵子を、専用の培養液の中で精子と受精できる状態まで発育させることです。

生体卵胞卵子吸引(せいたいらんぽうらんしきゅういん)

子宮灌流で受精卵を回収できない牛や繁殖月齢に達していない若牛から卵子を採取する技術で、「OPU(=Ovum Pick-Up)」と呼ぶこともあります。この技術は、超音波を使った専用機械を用いて、直接卵巣中の卵胞に針を刺して卵子を回収します。この卵子は、まだ受精能力を持たないので、成熟培養を行った後、体外受精を行って受精卵を作ります。(体外受精の項参照)

た行

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体外受精(たいがいじゅせい)

牛の卵巣から卵子(未成熟卵子)を取り出し、体外で成熟・受精・発育させて移植可能な受精卵を作出する技術で、「IVF(=In Vitro Fertilization)」ともいいます。
日本においては、1986年に初の子牛の出産例が報告されています。
牛の体外受精は、当初、食肉処理場等でと畜された牛の卵巣から卵子を採取していたため、低コストな受精卵の大量生産技術として利用されていましたが、現在は生きた牛からも卵子を採取することが可能となったため、優良牛の増産技術としても注目されています。(生体卵胞卵子吸引の項参照)

体細胞クローン(たいさいぼうくろーん)

すでに個体となっている家畜の細胞(例えば、耳の皮膚や卵管上皮など)を処理し、その細胞を、核を取り除いた未受精卵に挿入して融合させてできたクローン胚を移植して生産された、同じ遺伝子を持った複数の個体のことです。
家畜での体細胞クローンは、1996年にイギリスで、ほ乳類初のヒツジのドリーが誕生して世界中をアッといわせましたが、牛では、1998年7月に石川県で、肉用牛では世界初となる黒毛和種の体細胞クローン(“のと”と“かが”)が誕生しました。家畜改良センターでは、同年12月に世界で2例目(乳用種では世界初)となるジャージー牛の体細胞クローン(“フューチャー”と“フォーチュン”)を誕生させました。

 

凍結精液(とうけつせいえき)

人工授精に使うために、雄牛から精液を採取し、数倍~10数倍に希釈・処理した後、0.5ccのストローに入れ、-196℃の液体窒素で凍結保存したものです。この凍結精液は半永久的に保存が可能で、温湯(30~36℃)で融解して利用します。

は行

 

 

 

 

 

 

胚(はい)

卵子が精子と受精し、分割を始めて胎児となるまでの発生過程のもののことで、受精卵と同義語として使われています。「受精卵移植」は、「胚移植」とも呼ばれますが、「受精卵移植」のほうがよく使われています。

 
 

分割クローン(ぶんかつくろーん)

受精卵を、マイクロマニピュレーター等の特殊な専用器具を使用して2つに切断(切断二分離)し、それぞれを受精卵移植して生産した一卵性双子のことです。