飼料生産と種子生産の違い
牧草及びとうもろこしの種子を生産する場合、牧草等を扱うという点では飼料生産と同じですが、品種が保証される種子を生産することから、生産方法は大きく異なります。
| 項目 |
十勝牧場の 種子生産ほ場 |
一般的な 飼料生産ほ場 |
| ほ場内の種類 | 1種類1品種のみ |
複数の草種・品種の 混在も可 |
| 収穫対象 | 種子 |
茎、葉、実などの 植物体 |
| 収穫適期の目安 |
牧草:開花から30~35日頃 とうもろこし:完熟期 |
牧草:出穂期前後 とうもろこし:黄熟中後期 |
| 利用目的 |
次世代増殖の元となる 種子の生産 |
家畜の飼料 |
種子生産ほ場は「目的とする1草種1品種のみ」の種子を収穫します。
近辺に同種の植物があるとその花粉が対象品種に受粉し、本来の品種特性が失われることから、採種ほ場の一定距離内にある同種の植物を完全に除去します。
また、収穫時に雑草種子の混入が無いようにほ場内の雑草を極力除去し、さらに精選作業においても雑草種子やきょう雑物等を取り除くようにしています。
牧草やとうもろこしを飼料として収穫するときは茎や葉、実を目的としますが、種子生産の場合は穂が開花、受粉し種子が十分に登熟した完熟期に収穫します。
播種から収穫、越冬まで
種子生産ほ場は、まず起土・砕土・整地を行い造成します。
その後、基肥(苦土石灰や熔燐、鶏糞)を散布して播種を行います。
原種子等の素種子を生産する際の播種量は、10アールあたり200~500gと一般的な飼料生産に比べかなり少量で、播種には野菜用の播種機やシードテープを用います。
また、その栽培方法は生育中の除草や異型の淘汰を行うなど厳格かつ高頻度の管理が要求されるため、大型の農作業機でも管理することが可能なうね幅70~75cmの条播で栽培を行っています。
種子生産ほ場は雑草による生育障害や雑草種子の混入を防ぐため、除草剤散布や中耕等による除草を行います。
除草は「雑草」と「こぼれ種子が生育した株」を除去することを目的としています。
後者は、前年に収穫した際にこぼれ落ちた種子が生育した株であり、栽培株とは世代が異なるため取り除く必要があります。
除草する場所は「うねの間」、「株の間」、「ほ場の周囲」で、それぞれ作業方法は異なります。
「うねの間」は専用の除草剤散布機、中耕によって除草し、「株の間」は人力で雑草を判定して、掘り取りや除草剤のポイント散布により除草します。
「ほ場の周囲」は周辺の同一草種から花粉が飛来する事が無いように、耕起や掃除刈、除草剤散布による除去を行います。
除草は、採種にとって最もやっかいでかつ重要な作業であり、多くの時間と労力をかけて実施しています。
収穫作業はコムギでも用いられている汎用型コンバインにより行います。
種子の形状に応じたメッシュを装着し、茎や殻などを飛ばしたり、ふるい落としながら可能な限り選別を行います。
牧草種子は収穫のタイミングが重要で、早めに行うと水分が高く未熟な種子となり、一方遅すぎると自然落下により十分な採種量を得ることが出来ません。
そのため、開花からの経過日数や種子の水分、牧草の色などを指標として、適期に収穫するように努めています。
種子収穫終了後は、ほ場内に茎や葉が多く残っていることから、ハーベスターで細かく刻んでほ場外へ持ち出します。
この作業は蒸れによる植物株の枯死や越冬時の病害発生を防止するために必須な作業どです。
また、翌年も収穫する牧草には、収穫後にも肥料を与え翌年の収穫に備えます。
越冬後の株は3月末から4月はじめの春の訪れとともに萌芽し、引き続き種子の収穫に向けてほ場の管理作業を行います。
収穫した種子は水分含量が高く、そのままの状態では蒸れによる種子が死滅する原因となるため、通風乾燥を行います。
乾燥後の種子には「きょう雑物」(茎・葉・粉じん・石・虫の死骸・異種子等)や「未成熟種子」が多く含まれるため、精選により種子の純度や品質を高める必要があります。
製品となった種子は袋詰め後、温度・湿度が一定条件下に保たれた種子保管庫にて貯蔵し、海外増殖等の需要に応じて出荷されます。