家畜改良

遺伝能力曲線

最終更新日 2023/01/10

 2010-Ⅰ評価(2010年2月公表分)から、泌乳形質については検定日モデルという評価方法を用いています。検定日モデルでは、乳期あたりの遺伝的能力に加え、搾乳日毎の遺伝的能力を計算することができます。これをグラフで表したものを遺伝能力曲線と呼ぶこととし、種雄牛ごとに公表しています。

 搾乳日毎の遺伝的能力は以下の式によって計算できます。305日間の遺伝的能力をそれぞれ求め、グラフ化したものが遺伝能力曲線です。

 yia×Aib×Bic×CiDi

 ただし、

yi 搾乳日i 日目の遺伝的能力
a、b、c 遺伝的能力を計算するためのパラメータで、種雄牛ごとに異なる(評価毎に更新される)
Ai、Bi、Ci 搾乳日i 日目に対する係数
Di 搾乳日i 日目のベースの値(北海道・4月分娩の平均的な泌乳曲線の形状)

 下図が公表例です。種雄牛の遺伝能力曲線を実線で示し、比較の対象として、北海道・4月分娩の雌牛の平均的な泌乳曲線(ベース曲線といいます)を、乳期全体の平均が±0(ゼロ)となるような破線で示します。遺伝能力曲線とベース曲線に挟まれた部分の面積が、乳期当たりの遺伝的能力に相当します。

 

 遺伝能力曲線は、平均的な雌牛の泌乳曲線(ベース曲線)に種雄牛の搾乳日毎の遺伝的能力を加えて描いた曲線で、当該種雄牛の泌乳曲線を示すものではありません。ベース曲線との間隔(縦軸)が上部に広くなるほど、その泌乳ステージにおける遺伝的能力が高いことを示します。

 また、遺伝能力曲線の形状から泌乳持続性をイメージすることができます。つまり、上図の2個体は乳量の遺伝的能力は同程度ですが、左側に示した個体の方が泌乳持続性に優れていることが判ります。

 なお、遺伝的能力が評価の度に変化することがあるのと同様に、評価に用いた記録の追加等によって遺伝能力曲線の形状が変化することがあります。

 平均記録数は、種雄牛の評価に用いられた娘牛の3産次までの平均検定回数のことであり、概ね4~30の範囲で評価の度に徐々に増加していきます。平均記録数が7を超える頃には初産検定を終えた娘牛の記録が多数採用されていると考えられることから、遺伝能力曲線の形状が安定していると考えられます。